本田哲也氏著の『戦略PR』(2009年1月刊行)をきっかけに、新しいPRのテーマとして取り上げられることになった『戦略PR』。情報過多の昨今、消費者から支持させるための手法として認識されてました。
でも、戦略PR本当に自社にとって本当に必要な施策でしょうか?
本記事では著者が実践してきた戦略PRの手法を盛り込みながら、そもそも戦略PRとはどういったものなのか?戦略PRを効果的に実施すべき企業とそうでない企業の違いはどういったものなのか?について触れていきたいと思います。
戦略PRとは?
まずは戦略PRとはどいったものなのかから考えていきたいと思います。が、その前にPR(Public Relations)について簡単に触れておきたいと思います。
そもそもPRとは何の略なの?
「PR」と気軽に使っていますが、そもそもPRとはどのような言葉が短縮されたものでしょうか?
PRとは、「大衆の、公衆の」を意味する”Public”と、「関係、交渉」の”Relations”の頭文字を取った略語です。組織と組織をとりまくパブリックの間の、相互に利益のある関係を築く「戦略的コミュニケーションのプロセス」「思考」であり、混同されるような「情報発信すること”だけ”」がPRではありません。国際PR協会によるPRの定義からも日本国内で使われている「PR」がねじ曲がって伝わっていることがわかるはずです。
パブリックリレーションズは、信頼のおける、倫理的なコミュニケーション手法を通し、 組織と組織をとりまくパブリックとの間に、関係と利益を築くため、意思決定の管理を実践することである
Public relations is a decision-making management practice tasked with building relationships and interests between organisations and their publics based on the delivery of information through trusted and ethical communication methods.(IPRA,Oct. 2019)
国際PR協会(IPRA:International Public Relations Association)によるPRの定義
「組織と組織をとりまくパブリック」すなわちステークホルダー(企業・行政・NPO等の利害と行動に直接・間接的な利害関係)との関係構築を進めていく活動が『Public Relations』なのです。
では「戦略PR」とは?
メディアで紹介されることをPRと考える人が多い中で、よりパブリックリレーションズに近い考え方を取り入れたのが戦略PRです。「自己PR」「PR記事」など間違った理解をされていたPRから、本質的なPRにその認識を変容させたいと考えてあえて『戦略PR』と名付けたのかもしれません。
戦略PRの著者である本田哲也氏は戦略PRについて下記のように記載しています。
戦略PRとは
商品を売るためにつくり出したい空気=「カジュアル世論」をつくり、売上につなげる「戦略PR」の手法
新版 戦略PR 空気をつくる。世論で売る。
2009年当時はより商業的な「商品・サービス」について語られていましたが、昨今ではこの考え方を企業とステークホルダーの関係構築全般に活用することができます。
企業活動の本来の目的である、社会に対しての価値提供を前提とし、その社会の動きと自社の動きの接合点を作り、その接合点に両者が目を向ける、一歩踏み出すことを計画する、そんなPRの思考方法の1つが『戦略PR』ではないでしょうか。
戦略PRの特徴・効果
戦略PRは、企業側と消費者側の両者の環境変化によって、その効果的を期待されています。
企業の生産力が高まり、かつインフラの充実によって、日本国内に留まらず全世界が自社の競合となる世の中になりました。均質化しているからこそ、自社が、サービスがなぜ必要なのか背景から伝えていく必要があります。「日本の商品は品質がいいから買う」が理由ではなくなってしまったからこそ、その商品・サービスがどのような背景から生まれたものなのか、どんなことを解決するのか、社会(消費者)の興味から考えなければなりません。
また、消費者が取得できる情報が膨大になったことも見逃せません。インターネットが普及する中で、欲しいものの情報を多くてにすることができるようになりました。主体的に情報を取得することが当たり前になった中で、サービスの印象は行動に大きく影響を与えます。
例えば、あなたが40代でお腹まわりが気になる場合、この2つがあったらどっちを使いますか?(極端な例ですが..)
- 有名タレントがCMにでている新商品のお茶
- テレビやSNSで効果をよく見かける、特保のお茶
戦略PRの全体像
戦略PRは、社会の動きと自社の動きの接合点を作り、その接合点に両者が目を向ける、一歩踏み出そうとする状況を計画すること、その誘導をすることです。
ポジショントークで適当なことを言うとすぐにバレる、諸刃の剣です。だからこそ商業的な理由でなく、本当にそのテーマに対してコミットできるのかを自問自答することが必要。戦略PRを成功させるためには大きく3つの要素が必要となります。
<戦略PRの成功に欠かせない要素>
- 社会(業界)課題を顕在化させる
- 自社サービスの発信内容を課題に合わせて調整する
- 社会(業界)課題と自社の特徴・強みをブリッジさせる
上記を実現するためには、企業と消費者の両者が共通のテーマでお互いを認識・発信する必要があります。
自社(サービス)の軸になるテーマを設定し、その軸となるテーマから今社会(業界)で取り上げられているテーマ、今後テーマになる可能性があるテーマを見つけ出し、そのさきに自社の強みや状況と合わせたワードを散りばめるテーマの連動性が作れることが理想です。
戦略PRの手順
戦略PRは5つの手順で進めることができます。
戦略PRの手順1:社会・業界のテーマを把握する
マーケティングのPEST分析と基本は同じです。政治的要因、経済的要因、社会的要因、技術的要因といった、自社に関連するものの、自社ではコントロールが難しい4つの要因を洗い出しましょう。
また、業界のトレンドについてもここで抽出しておいてください。
戦略PRの手順2:接点を見つけて、テーマを抽出する
手順1で社会・業界のテーマを把握したら、自社との接合点を抽出していきましょう。法規制や社会トレンドの変化について他社に先駆け情報発信、施策を立案することで、競合優位性を狙うことができます。
現在社会や市場で語られているテーマだと、どのテーマで自社が認識されると理想か。今後どんな市場を築いていけると自社にとって効果的かを意識して抽出しましょう。
戦略PRの手順3:テーマと自社との接合点を整理・文脈を作る
自社にとっての理想のテーマが見つかったら、自社が伝えたい対象(商品、サービス、組織など)とテーマの行間を埋めていきます。
テーマから対象までは2〜3つほどの単語でつなげると理想です。非常に簡易ですが、例えば「働き方改革」の場合下記のようなことが考えられます。
戦略PRの手順4:PR戦略の立案・実施
文脈が決まったら、いよいよPR戦略を立案・実施していきます。
どのステークホルダーを優先してコミュニケーションをしていくのか、そのためにどんな年間計画で進めていくのか、どこでどんな施策を実施していくのかを検討し、実施していきましょう。
こちらの「記事:PR・広報戦略をはじめて作成するには?」を参考にしてみてください。
本記事ではPRの思考方法の1つ『戦略PR』について解説しました。
戦略PRはあくまで思考方法でしかありません。ステークホルダーに対して効果的な活動をするために、経営戦略とのすり合わせを行い、経営戦略に沿ったPR活動の立案・実施を進めてみてください。